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冬至を前にしたお寺の出来事です。
あるお檀家さんから「うちの庭で出来た柚子です。小さくて少々痛んでますが、農薬もかかってませんから安心してお風呂にでも入れて楽しんで下さい」とたくさんの柚子を頂戴しました。
頂いた柚子をお寺に持ち帰った晩のこと、夕食が済んでくつろいでいらっしゃる院首さんへ「お風呂にしますか?今日は柚子風呂ですよ」と母が声を掛けました。すると、院首さんは「ありがとう」とおっしゃって、いつものようにお風呂へ入って行かれました。
何時もなら、風呂上りに「お休み」とだけ皆に声をかけ、部屋へ下がって行かれる院首さんが、なにやらうれしそうに「それがなぁ、柚子が面白いんじゃ」と言って話し出されたのです。
院首さんによると、湯船には十個ほどの柚子が浮かんでいて、そのままでは風呂に入り難かったので、掛湯をした桶で足元のほうへ柚子を寄せてから、湯船につかったそうです。すると、ぷかぷかと足元で湯に揺られていた柚子たちが、 仲良くならんで院首さんの顔の方へやって来たというのです。その様子が「なんとも、可愛らしいんじゃ!」と笑ってお話下さいました。
院首さんが、ほんとうにうれしそうにお話なさるものですから、柚子のことなどすっかり忘れていた私も、柚子風呂に興味をそそられてしまいました。
そして院首さんの話の後、続いて風呂に入った母が出て来て、とうとう私の番が回ってきました。柚子の香りでいっぱいになった風呂場で、院首さんがされたであろう通りに、柚子たちを足元へ集め、湯船につかってその時を待ちました。すると、柚子たちは私の前でも同じようにぷかぷか並んでやって来てくれました。虫に食われてごつごつしたのや、まだ青さの残ったのや、大きいのや、小さいのがおりましたが、みんな仲良く浮かんで、楽しそうなのです。その様子に私も、自然とうれしくなっておりました。
それに、何も言わなかったのですが私より先に入った母も、きっと間違いなく同じ事をしたんだろうなと思うと、余計に面白くなって、ひとり風呂場で笑ってしまいました。
あのね お上人。みんなね、よく「そのうち そのうち」て言いますやろ。そやけど、私ぐらいの年になると、いつ「そのうち」がなくなるか分かりませんもんな。そやから私「そのうち」やのうて「今のうち」にしたい事、しとこう思いますねん。
七十才 女性
あのね お上人。こないだね、うちの小学校行てます孫がね「おばあちゃん、おれが嫁をもらうまでは、死なんとってや!」て、言ってくれましてん。
六十五才 女性